街と邸宅を分かつのは、空を鋭角に切り取る「黒のフレーム」。
単なる門構えではなく、ここから先がプライベートな領域であることを示す象徴的なラインとして設計しました。
白い塗り壁をキャンバスに見立て、植栽の緑と落ちる影が、時間とともに移ろう絵画のようにファサードを彩ります。
高低差のあるアプローチ階段は、一歩上るごとに日常の喧騒を遠ざけ、安らぎへとモードを切り替えるための装置です。
モダンなファサードの奥に隠されたのは、住まう人だけが知る「和」の静寂。
黒いタイルと白砂利のコントラストの中に、蹲(つくばい)から滴る水音が響きます。
現代的な機能美の中に、日本古来の美意識をひっそりと忍ばせる。
心の澱(おり)を洗い流すような、深い精神性を宿した空間です。